Jamendo:CCミュージックへの広告収入の分配、など最近の動き

2007年11月02日

前回のエントリではJamendoのCCアルバム5,000枚達成という記事を紹介したのだけれど、そんなわけでまたJamendoBlogから最近のJamendo関連の動きをピックアップしてみようと思います。

とその前に、以前Jamendoの動きをお知らせしたときのように、今回もJamendo上でアルバムを配信しているアーティストの紹介から。 今回はFury Taleというバンド。イントロは泥臭い感じだなぁ(悪い意味じゃなくてね)という印象を受けたのだけれども、ボーカルの入りがいい感じで裏切ってくれたので、即ダウンロード。 パーマネントな集まりなのかはわからないのだけれども(Guitar Session Colomiersというところから派生したバンドの模様)、なかなかよかった。ギターのYvalainはソロでも活動しているらしく、こちらは随分渋い感じ(ジャンルはバロック! Fury Taleとは全然違うのでちょっとビックリ)。結構年なのかな?ということで、よかったらこのFury Taleの曲を聞きながら、読んでくださいませ。


まずはじめは、Jamendoが広告収入をアーティストに分配するよというお話から。

Good News!本日、私たちは4月から7月までの収入を分配しました。総額6,000ユーロ(約100万円)が、このプログラムを申し込んだアーティストたちで分配されます。

それはどのように働いているか。毎月、このプログラムに登録したアーティストたちは、Jamendoの広告収入の50%を得ます。分配率は、その人のJamendoページへの訪問者数に比例します。つまり、アーティストページにより多くの人々が訪れるほど、より多くのお金が得られるということです!

このシステムは、人気あるアーティストに若干のお金儲けを可能にしながら、Creative Commonsライセンス(それによって、ユーザは音楽を無料でダウンロードし共有することを許諾される)の使用のためのもっともイノベーティブな方法の1つとなります。

6,000 euros shared with our artists! - Jamendo Blog / September 3rd, 2007 から引用

Creative Commonsへの1つの誤解として、Creative Commonsライセンス下にあるコンテンツはすべからく無償であるという思い込みがある。もちろん、ノンコマーシャルラインセンスがあるものをノンコマーシャルに利用することは、確かにペイに関連するものではないが、それをコマーシャルな用途で利用する場合には、その利益はコンテンツの製作者に還元されるべきだろう。

Creative Commonsオランダは著作権徴収団体 Buma/Stemra とともに、Creative Commonsライセンス下で配布されている著作物の商用利用に対する著作権料の支払いに関するプロジェクトに取り組んでいる。このJamendoの広告収入の分配も、Creative Commonsライセンスでの公表によって利益を損ねられるわけではない、ということを体現したいのだろう。

世の中にはCreative Commonsを清貧の象徴のように捉えている人もいるけれど、実際にはそうじゃない。主に商用であれ、非商用であれ、そこからどのような利益を得ようとするか、ということを創作者や公表者が自らの望ましい形で公表することができる、ってことなんじゃないのかな。もちろん、問題が完全にないわけじゃないだろうけど、その問題が全てを否定しうるものでもないと思う。


続いては、Jamendoが『Red Hat magazine』とパートナーシップを結んだ、というニュース。

週刊のRed Hat magazine上に、Creative Commonsライセンスにて作品を公表しているアーティストを紹介するコーナー、 Creative Commons Artist Spotlightを設けるとのこと。 その目的としては、より多くのアーティストに作品をCCライセンスにて公表することを促進するというもののようだ。 その最初の週はオルタナプログレッシブバンド『Convey』。 オルタナファンは好きかも、プログレファンは期待しないほうがいいかも、という感じのバンド。 個人的にはGoodな感じ。早速ダウンロードして、お気に入りに追加してみた。

そんな風に少しでも多くの人の目に触れるよう取り組んでいるようで、これはJamendoにて楽曲を提供しているアーティスト、ひいてはJamendoを利用しているリスナーにとっても素晴らしいことだろう。


次は、Jamendoが、あなたとJamendo、Creative Commonsについてのお話を募集しているというお話。

ちょっとしたJamendoやCCによるエクスペリエンスを是非とも表現して、レコメンド欲しいとのことらしい。ここでは、ヴァージニア工科大学の学生からのビデオコメントを紹介している。最後はまさに彼なりの表現なのだろう。若さとは素晴らしいものだ。


Jamendo testimonials
Uploaded by romandroll


また、10月の話題としては、Creative Commonsの5th launch dayに参加し、そこでJamendoにてCCミュージックを配信するアーティストのコンピレーションCDを配ったようだ。そこではCCライセンスと文化的な作品、特に音楽について議論が交わされ、まだまだ克服すべき点はあるにしても、アーティストがJamendoとCCが促進する新たな配信モデルに確信を抱いていることが示されたのだという。まぁ、もちろん、そういう場だからそういう結論にもなるのだろうけれど。もちろん、私としてもJamendoのようなプラットフォームの可能性を信じて止まない1人だけどね。


まだまだ続きます。10月26日のエントリによると、それまでの数日間の間にロシアからJamendoに加わったアーティスト、ユーザが急増したらしい。 それはLinux.org.ruをはじめとする複数のサイト、ブログがJamendoのアルバム5,000枚突破を記事した結果であるようだ。 日本のサイト、ブログの皆様も、どうぞJamendoをレコメンドしてくださいませませ。もちろん、無駄に煽れってわけじゃなくてね。 でも、十分にレコメンドされるだけの価値のあるサービスだと思う。


最後に、イタリアの著作権料徴収Siaeが、Buma/Stemra と CCオランダのプロジェクトのイタリア版のために協力していくことに同意した、 という話題。 これによってコピーレフトはますます広げられるかもしれない、としている。これは Siae と Free Hardware Foundation との共同によって進められ、Frontiere Digitali(議論のためのメーリングリストやwikiの提供)、Jamendo、 Wikimedia Italia Beatpick Fiordiluna icecreams (著作権料徴収団体に支払う必要のないコピーレフトミュージックを普及させたオーガニックフェアなアイスクリームショップ)などがパートナーとして参加するのだという(詳しくはこちら)。


余談だけれども、なぜ私がISPによる帯域制御や、ダウンロード違法化に強く反対しているか、というと、このようなサービスを邪魔されたくない、という願いからでもある。ISPが帯域制御をかけることそれ自体には、現状では致し方ないと思う部分もあるのだけれども、それが過度に適用されることによって、せっかくWebの特性を生かした、全うなサービスが阻害されてしまうことにもなりかねない。また、商業的な著作権所有者たちに都合のいい法改正がなされることで、せっかく合法的な取り組みによって作品を広めようとする試みを抑制されかねない。

もちろん、Jamendoのようなサービスはちょっと調べれば、これが合法的なサービスだとわかるだろうし、紹介する人もそう言うだろう。しかし、Jamendoほど認知されていないサービスではどうだろうか?それほどレビューされていない、しかし、画期的なサービス、そんなものがでてきたとき、たとえそれが想像を絶する交渉や努力の末に成し遂げられた革新的なサービスであっても、それを知りえなければ、その革新性は違法な行為によってクリアされているのでは?という疑問を持つかもしれない。そうしてユーザの手が引っ込められるということもありえるのではないだろうか?

もちろん、このブログを読んでいるようなGeekな知識ある皆様はそういった懸念を持たないだろう。ただ、問題はこのようなサービスを下支えする、ごく普通のネットユーザなのだ。ダウンロード違法化の議論を見ていても、未だに逮捕とか、警察の点数稼ぎという言葉を見かける。この問題に関心を示す人ですら、そうなのだ。彼らに知識がないということではない、違法化されるということは、普通に人々にとって、そのように認識されうる、ということを示しているのだ。

ひとたびこのような法律が通れば、行使するしないは別にしても、その(つまりプロパガンダの)効力を高めるために、刑事罰を含む改正を求めることになるのかもしれない。そうなれば更に状況はひどくなる。

これまでは商業的ではないという烙印を押された、商業性を求めてはいない作品を、人々の前に公表するという機会は非常に限られた範囲のものだった。しかし、インターネットはそこに光をあて、多少の制限はあっても、多くの人が自らの表現を公表するチャンスを与えてくれた。そしてその制限は次第に取り払われつつある。その段に至って更にそこに制限を加えようとする試みは、断固反対されなければならない。

Creative Commons License

エントリ内の引用部分を利用する際は、引用元のライセンスにも従ってください。


著者: heatwave
転載元: http://peer2peer.blog79.fc2.com/blog-entry-832.html
転載日: 2007-11-14
inserted by FC2 system